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[ CIS-HQ / CORPORATION — グリッピア・ワークス社 / CGM社 ]
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GRIPPIA WORKS & CGM

グリッピア・ワークス社/CGM社 ── 一企業グループが一惑星と一宙域を丸ごと私有する、星系史上前例のない特殊金属企業。艦の装甲から食器のスプーンまで、ライラットの「硬いもの」は大抵この会社を通っている。

概要 OVERVIEW

グリッピア・ワークス社は、金属加工への尋常ならざる情熱で知られるヘケトイドの実業家グリッピー・トードが創業した特殊金属企業である。星系最外縁の惑星グリッピアを丸ごと私有しており星の名は創業者にちなむ。採掘部門子会社のコーネリア特殊金属株式会社(CGM社)が採掘・精錬の実務とセクターϞの宙域管理を担っており、二つの社名が並べて呼ばれるのはこのためである。事業の柱は二本ある。艦艇装甲の標準素材となったCGM合金と、その性能の核であり星系の流通量の9割を占める希少元素ニヴィディウムである。

どちらも星系全体が依存する戦略物資であり、「一企業グループが一惑星と一宙域を私有する」形態の是非は共和国議会の定番議題であり続けている。それでも黙認が続く最大の理由はニヴィディウムの供給網にあるとされる。かつてパペトゥーンの鉱床を巡る熱狂と枯渇が星系を240年の戦乱へ導いた歴史を思えば、その供給を止められる企業に議会が正面から手を出せない事情は理解できる。もっとも当の議場の防弾壁もCGM合金製であるというのが業界の定番の笑い話である。

沿革 HISTORY

トード家はセティボスの重力がワープ航路を捻じ曲げる問題を解決した天才数学者兼技術者イワッチー・トードに始まる名門技術者一族である。グリッピーはその直系にあたる。兄ベルツィーノがSD社で機体設計の道へ進んだのに対し、弟は「空を飛ぶものよりそれを作る素材」に取り憑かれた。若い頃にコーネリアの鉱山で働いた経験が後の会社の全ての出発点になっている。

創業の逸話は星系で最も有名な賭けの一つである。「遠すぎて採算の合わない鉱脈」として放置されていた最外縁の岩石惑星を、私財を投じて惑星ごと買い取るという前代未聞の手段で手に入れたのである。当時の経済紙はこれを「トードの凍土」と嘲笑した。だが数年後に嘲笑は沈黙へ変わる。地殻の浅い位置を走る超高純度の重金属鉱脈から精錬された合金が艦艇装甲の水準を塗り替え、鉱石に含まれていたニヴィディウムが二世紀ぶりに星系の熱狂を呼び戻したためである。この星が「核だけになった星」であり地質活動の絶えた極寒の環境こそが精錬に理想的であったことは、惑星グリッピアの記録に詳しい。「良い金属は静かな場所で育んだあョ」という会長の弁は、後から惑星科学の裏付けを得たことになる。以来、同社は外部資本を一切入れない完全同族経営を貫いている。

辺境の一鉱山会社をフロンティアの司令塔へ押し上げたのが、中継基地メテオベースの取得である。中継基地の適地を探していた会長は静かな小惑星を一目見るなり購入を即断し、「CGM・メテオ・プラットフォームベース」を築いた。フロンティア・ラインの中継点となったこの基地を通じて同社の金属と氷晶帯の氷が内側の星々へ流れ、コーネリアのマイニング・ギルドでは最後発の新規参入者がわずかな年月で最大の勢力に成り上がった。老舗たちが「開拓地の成り上がり」と鼻を鳴らしつつ、その合金なしには自社の採掘設備すら組めない現実を受け入れているのが今日の勢力図である。

主要事業 MAJOR WORKS

中核はCGM合金の精錬と供給である。アーウィンの装甲材をはじめ共和国艦艇の外殻・民間船の隔壁・都市の耐震骨材まで用途は際限がない。契約は「品質・納期・価格を全顧客で同一とする」一物一価が原則であり、軍であろうと値引きには応じない。営業部の決まり文句「合金は旗を選ばない」はこの原則を指している。帝国占領地の造船所にも同じ価格表が届いており、「戦線は納期にしか影響しない」と揶揄される所以である。

もう一つの柱がニヴィディウムの供給である。演算基板と管制系のほぼ全てがこの元素の性質の上に載っており、燃料や火薬の原料から宝飾品までを賄う万能の資源をCGM社はほぼ独占している。供給は四半期ごとの割当制で全顧客に同一条件が適用され、割当を巡る駆け引きが星系の相場を動かすことも珍しくない。かつてわずか十数年で掘り尽くされたパペトゥーンの鉱床を教訓に、同社は年間の採掘量に上限を設けた長期計画を公表している。「掘り尽くさない鉱山」を掲げる姿勢は業界でも異例とされる。

宙域管理業務ではメテオベースの運営と氷晶帯方面の航路保安を担い、アイスランナーたちの物流を束ねる辺境経済の裏方として機能している。企業警備艦隊が宙域行政の実働部隊を兼ねるこの形態は企業警備艦隊の権限拡大の代表例として議会で繰り返し取り上げられてきた。近年はサイバネティクス向けの生体適合合金の分野にも進出し、医療業界から注目を集めている。

組織と人物 ORGANIZATION

会長グリッピー・トードは現在も月の半分を採掘現場で過ごし、「役員室より坑道が好きな会長」として社員の敬愛を集める。住民のほぼ全てが社員とその家族という「社宅惑星」の性質上、社内共済・学校・病院まで全てを会社が運営している。その手厚さは共和国の労働官僚が視察に来るほどである。人種を問わない不問採用の社風は徹底しており、差別を禁じる就業規則は星系のどの法律よりも厳格に運用されていると言われる。

組織の中で異彩を放つのが警備部門である。企業警備艦隊は派手な兵装よりも自社製最高級合金の艦体を信条とし、撃たれても沈まないことを何より優先して設計されている。「中小国の正規軍より硬い」という評判はここから来ている。地上と鉱床は自動警備ロボット群と万能汎用監視カメラプロテカムが守り、鉱床の防衛は新人研修で例外なく通過する最も基礎的な業務である。会長自ら講習に登場し「チミのお仕事はぁ そのプロテカムで 基地を守ることだあよョ」と語りかけるのが入社初日の恒例となっている。

甥のスリッピー・トードはスターフォックスのメカニックであり、惑星グリッピアの警備システムは彼が個人受注で構築した。あくまで個人事業主としての契約であり所属する傭兵部隊とは無関係、というのが同社の公式見解である。SD社とグリッピア・ワークスとスターフォックス。ライラットの航空宇宙技術がトード家の食卓で完結しているという冗談はあながち冗談でもない。

記録余話 ARCHIVES

両軍の調達官が同じ日に来社した際は、応接室を二つ用意し全く同じ茶菓子を出すのが社の作法である。「どちらにも売るが、どちらにも肩入れしない」の一点を崩さないことが辺境の平和の要になっているという。もっとも共和国軍情報部は帝国がCGM社への接触を試みた形跡を複数確認している。この星が帝国側に付けば艦艇装甲の供給網が根本から崩れるため、CDFはグリッピアを「戦火から最も遠く、戦略から最も近い星」と位置付けている。

本社ロビーには創業時に使われた古いツルハシが飾られている。銘板に刻まれているのは「最初の一振り。以下続く」の一言だけである。若いころのグリッピーがコーネリアの鉱山で労働した際に口癖にした言葉である。

プロテカムの特許を巡って争った際、相手企業の度重なる営業妨害に悩まされた会長は甥に一つの提案をした。星系で最もPCを破壊した悪名高いウイルスの強化版を作って送り付けるというものであり、甥は本当に作って相手に送り付けたのであった。この一件は同社の法務部が「二度と表に出さない」と決めた社史の一頁であるが、辺境ではむしろ痛快な逸話として語り継がれている。

鉱床が陥落寸前まで追い込まれた襲撃事件と、納品のたびに叔父と甥が誰も発注していない改良型を作り上げてしまう「トード家の病気」については惑星グリッピアの記録に譲る。第一炉の管理主任いわく、付き合わされる整備班は毎度疲れ果てるものの出来上がる機械がいつも文句なしに良いため辞退した者は一人もいないという。