概要 OVERVIEW
グリッピア・ワークス社は、金属加工への尋常ならざる情熱で知られるヘケトイドの実業家グリッピー・トードが創業した特殊金属企業。星系最外縁の惑星グリッピアを丸ごと私有しており、星の名は創業者にちなむ。採掘部門子会社のコーネリア特殊金属株式会社(CGM社)が採掘・精錬の実務とセクターϞの宙域管理を担う。
CGM製特殊合金は艦艇装甲の標準素材として星系全体が依存する戦略物資であり、「一企業グループが一惑星と一宙域を私有する」形態の是非は、共和国議会の定番議題であり続けている。もっとも当の議場の防弾壁もCGM合金製である、というのが業界の定番の笑い話である。
沿革 HISTORY
トード家は、セティボスの重力がワープ航路を捻じ曲げる問題を解決した天才数学者兼技術者イワッチー・トードに始まる名門技術者一族である。グリッピーはその直系にあたるが、兄ベルツィーノがSD社で機体設計の道へ進んだのに対し、弟は「空を飛ぶものより、それを作る素材」に取り憑かれた。
辺境の無人惑星の採掘権を「会社の全財産と引き換えに」落札した創業期の逸話は有名で、当時の経済紙は「トードの氷牢」と嘲笑した。だが数年後、その氷の下から出た超高純度鉱脈が艦艇装甲の水準を塗り替えると、嘲笑は沈黙に変わった。以来、同社は外部資本を一切入れない完全同族経営を貫いている。
主要事業 MAJOR WORKS
中核はCGM合金の精錬と供給である。アーウィンの装甲材をはじめ、共和国艦艇の外殻、民間船の隔壁、都市の耐震骨材まで用途は際限がない。契約は「品質・納期・価格を全顧客で同一とする」一物一価が原則で、軍であろうと値引きには応じない──「合金は旗を選ばない」が営業部の決まり文句である。
宙域管理業務では、中継基地メテオベースの運営協力と氷晶帯方面の航路保安を担い、辺境経済の裏方として機能している。近年はサイバネティクス向けの生体適合合金の分野にも進出し、医療業界から注目を集めている。
組織と人物 ORGANIZATION
総帥グリッピー・トードは現在も月の半分を採掘現場で過ごし、「役員室より坑道が好きな総帥」として社員の敬愛を集める。住民のほぼ全てが社員とその家族という「社宅惑星」の性質上、社内共済・学校・病院まで全てを会社が運営しており、その手厚さは共和国の労働官僚が視察に来るほどである。
甥のスリッピー・トードはスターフォックスのメカニックであり、惑星グリッピアの警備システムは彼が個人受注で構築した。SD社・グリッピア・ワークス・スターフォックス──ライラットの航空宇宙技術がトード家の食卓で完結しているという冗談は、あながち冗談でもない。
記録余話 ARCHIVES
両軍の調達官が同じ日に来社した際は、応接室を二つ用意し、全く同じ茶菓子を出すのが社の作法である。「どちらにも売るが、どちらにも肩入れしない」──この一点を崩さないことが、辺境の平和の一部になっている。
本社ロビーには創業時に使われた古いツルハシが飾られている。銘板には一言──「最初の一振り。以下、続く」。