概要 OVERVIEW
RAI-JINGコーポレーションはコーネリアシティに本社を置く貿易会社であり、格闘技のスポンサーとしても有名な企業である。社長の弟は星系ネットの代表検索サービス「WAHOO」を管理するHOO-JINGコーポレーションの社長であり、兄弟そろって企業を運営していることで知られる。並べて掲げられた両社の社章が雷神と風神の対の意匠になっていることは、兄弟仲が最悪だった時代を知る世代にはいささか皮肉に映るという。
RAI-JINGコーポレーション ── コーネリアシティの老舗貿易商社にして、格闘技クロスバウトの大スポンサー。検索サービスWAHOOを擁する弟会社HOO-JINGコーポレーションと合わせ、星系の茶の間はこの兄弟の喧嘩と仲直りをクロスバウトの中継付きで見物している。
RAI-JINGコーポレーションはコーネリアシティに本社を置く貿易会社であり、格闘技のスポンサーとしても有名な企業である。社長の弟は星系ネットの代表検索サービス「WAHOO」を管理するHOO-JINGコーポレーションの社長であり、兄弟そろって企業を運営していることで知られる。並べて掲げられた両社の社章が雷神と風神の対の意匠になっていることは、兄弟仲が最悪だった時代を知る世代にはいささか皮肉に映るという。
兄が率いるRAI-JINGは星系各地の物産を扱う貿易商社であり、現在の共和国では珍しいほど古風な社風を残している。良く言えば体育会系、正確に言えばパワハラとしゃけハラのオンパレードである。社長本人はハラスメントで起訴される常連になりすぎており、弁護人や検事とは「いつものメンバー」と言われるような関係が出来上がっている。裁判所の廊下で検事と昼食の約束を交わす様子が報じられたことすらある。
星系規模で悪名を轟かせた一件がホワイトファング急便の買収未遂である。「配達は仕事ではなく責任である」を社訓とするフィチナの国民的企業を金で買おうとしたこの一件は州民の逆鱗に触れ、以来フィチナ圏では社名を出した時の相手の顔で嫌われ度合いが分かると言われるまでになった。同社のフィチナ支店が現地採用の維持に苦労し続けていることは業界では有名な話である。
弟が率いるHOO-JINGは、星系ネットの代表検索サービス「WAHOO」の管理運営で知られるIT企業である。創業の動機は明快で弟は横柄な兄が嫌いだったため何もかも正反対の会社を作ったのである。上下関係を廃し、怒声を禁じ、福利厚生を星系最高水準に整えた社風は当初「理想の職場」と持て囃された。
ところが理想は別方面で問題を山積させた。あまりに手厚く守られた結果、社員の軟弱さに磨きがかかり新人が足をくじいただけで退職するレベルに達した。この事例は社内で伝説となっており負荷をかければ兄の会社と同じに…かけなければ誰も残らないという板挟みに、人事部は今日もこの間で頭を抱えている。
犬猿の仲だった兄弟を和解させたのは、皮肉にも共通の敵である。アワゾン・プライマル社の無人ドローン配送網が貿易にまで勢力を伸ばして兄の本業を脅かし、弟のWAHOOも同社の生活プラットフォームに押され続けた。危機感を共有した兄弟は仲直りの上で共同事業を立ち上げる。それが「クロスバウトの興行とネット配信」である。
この読みは大当たりした。クロスバウト配信は現在の星系で一番の鉄板人気コンテンツであり、どこへ行っても視聴することができ、公式試合前にはテレビとネットの広告を埋め尽くすレベルに達している。兄が興行と会場を仕切り、弟が配信と広告を回す分業は「雷が殴らせ、風が届ける」と評され、両社の業績を同時に立て直した。カタリナ興行の隆盛も両社の出資によるものであり、「大巨人」「怪物」の異名で観客を沸かせる新鋭を早くから支援してきたのもこの兄弟である。
兄弟和解の席はクロスバウトの観戦席だったと伝えられる。試合そっちのけの口論の末に「決着はリングで付ける」と二人揃って柵を跨ぎかけ、係員に止められたところで何かが吹っ切れたらしい。両社の広報はこの逸話を否定も肯定もせず、「あれが配信されていれば今期最高の視聴数だった」とだけコメントしている。
本アーカイブとの関連事項を一件付記する。RAI-JING営業部には勤務態度と営業成績が星系最悪の乖離を示す人物が在籍している。詳細は人事ファイルPF-34を参照されたい。なお会社側は何も知らないようだが無理もない。