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[ CIS-HQ / CORPORATION — シマリスカ株式会社 ]
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SHIMARISKA CO.

シマリスカ株式会社 ── 星系一有名な駄菓子「うまいボーン」を作り続けて360年。社名を知らなくても製品は誰もが知っている、グランベル州の老舗中小企業。

概要 OVERVIEW

シマリスカ株式会社は、コーネリアのグランベル州にある食品加工の会社である。この会社の名前を知らなくても、ライラット星系中で販売されている駄菓子「うまいボーン」の製造元といえば話が早い。

創業はなんと380年前。名だたる大企業を除けば、この規模の中小企業が当時の姿のまま現存している例は星系でも極めて珍しく、企業史の研究対象としても注目に値する存在である。

創業 FOUNDING

初代社長は、惑星キューから来たシマリス系キューソイドの移民である。社名はこの初代の種族に由来する。当時の大グランベル国はワングロサクソン系アヌビソイド優位の風土が強く、移民である上に小柄な体格も災いして、初代はまともな職に就くことができなかった。転機はレストランの厨房で下働きをしていた時に訪れる。毎日大量に廃棄されていく骨と野菜屑の山を見て、食品加工のアイデアを閃いたのである。

初代は町中のレストランから廃棄予定の骨と野菜屑を低価格で掻き集め、骨からは軟骨層を分離し、野菜は香辛料と共に煮込んだ。両者をペースト状に固めたシートを幾重にも芯へ巻き付けることで、噛み応えがあり、かつ携帯食としても有用な棒状の加工食品が生まれた。当初こそ衛生面を不安視する声や、製作者の人種を見て非難する声も多かったが、犬系・狼系種族の味の好みを徹底的に研究した改良を重ねるうち、批判は称賛へと入れ替わっていったという。

レーションの時代 RATION ERA

会社としての始まりは、第1次ライラットウォーズのさなか、大グランベル国の軍部がローザリンドへの侵攻を計画していた時代に遡る。兵隊の士気を上げるため、軍部が民間企業にレーションの製造を依頼したのである。初代の携帯食は前線の兵士たちの熱い推薦を受けて正式なレーションとして採用され、これがシマリスカ躍進の始まりとなった。「兵の胃袋を掴んだ移民」の立身出世は、当時のグランベルでは異例中の異例だった。

この時代に生まれた製品には、軟骨細胞から合成したコラーゲンシートをボール状に丸めた「ガムボール」や、ケダモノの血液にブイヨンと調味料を混ぜて固めた「ブラッドドロップ」など、アヌビソイド人種向けのものが多い。いずれも現在まで販売が続いており、軍用品としてだけでなく日常の嗜好品としてコーネリアで親しまれている。

なお第1次ライラットウォーズ末期、星系統合艦隊の制式糧食、後に悪名を轟かせる「Vレーション」の選定にはシマリスカも参加している。だが中小企業の生産力では艦隊規模の量産に応えられず、採用は大手に流れた。結果として兵士たちは「餌」と酷評された制式糧食を支給される一方、シマリスカの携帯食を私費で買い込み続けることになる。当時の従軍記録に残る「本当のレーションは支給袋ではなく、胸ポケットに入っている」という兵士の言葉は、同社の社史の扉に今も掲げられている。

うまいボーン誕生 BIRTH OF UMAI-BONE

創業から約20年後、ローザリンド方面の戦線が膠着し軍の大口契約が打ち切られると、シマリスカは倉庫に山と残ったレーション用のシート材を前に窮地へ立たされた。この在庫を子供の手に収まる大きさに巻き直し、駄菓子として売り出したものこそ、約360年前に誕生した初代「うまいボーン」である。初代社長は値付けの際、「子供が拾った硬貨一枚で買えること」だけを条件にしたと伝えられ、この方針が今日まで続く「概ね10スペースセント」の定価の起源となった。

最初のフレーバーがコーンポタージュ味とかば焼き味の2種だったのは、レーション時代の在庫がスープ用とジャーキー用の2系統だったためである。窮余の策から生まれた駄菓子は瞬く間に街の子供たちの定番となり、戦時の配給網に乗って戦場の外まで広がった。皮肉なことに、軍向けの商いを失ったことが、シマリスカを「星系一有名な駄菓子屋」に変えたのである。

記録余話 ARCHIVES

もっとも、シマリスカの経営は完全なホワイトというわけではない。老舗にありがちな、改革を拒む旧式経営が常態化しているのである。10年ほど前には、長時間労働をさせた社員への給料を「うまいボーン」で現物支給していたことが社員のリークで発覚し、社長は罰金10,000スペースドルの支払いを命じられた。

この裁判で検察側が読み上げた求刑が「罰金、うまいボーン10万本分の支払いを命ずる」だったことはSNSでも大きな話題となった。換算すればきっちり1本10スペースセント×10万本=1万スペースドル。罰金の単位に菓子が用いられた星系初の判例であり、経済学と法学の講義が年に一度ずつ小ネタとして拝借している。なお罰金は、現金で支払われている。