概要 OVERVIEW
テイル&テイラー社はコーネリアに本社を置く星系最大の服飾メーカー。既製服の背面開口の共通規格「テイル・スリット規格」の策定を主導した企業として知られ、胴回りと尾径を併記する現在のサイズ表記法も同社の発案である。日常着から式典衣装、宇宙服の内衣まで、「布が身体に触れるもの」ほぼ全てを手がける。
羽織るだけの翼種向けマント正装、角・大耳対応の特注帽子工房、そして小型種向けの「Qテイラー」ライン──多種族社会の身体の多様性を、規格と仕立ての両輪で受け止めてきた会社である。
テイル&テイラー社 ── 尻尾、翼、角、そして甲羅。あらゆる身体に服を仕立てる多種族服飾の最大手。「服が身体に合わせるのだ。逆ではない」の社訓とともに、ライラットの装いの標準を作ってきた。
テイル&テイラー社はコーネリアに本社を置く星系最大の服飾メーカー。既製服の背面開口の共通規格「テイル・スリット規格」の策定を主導した企業として知られ、胴回りと尾径を併記する現在のサイズ表記法も同社の発案である。日常着から式典衣装、宇宙服の内衣まで、「布が身体に触れるもの」ほぼ全てを手がける。
羽織るだけの翼種向けマント正装、角・大耳対応の特注帽子工房、そして小型種向けの「Qテイラー」ライン──多種族社会の身体の多様性を、規格と仕立ての両輪で受け止めてきた会社である。
前身は旧コーディリア王国時代の宮廷仕立屋と伝えられるが、社史が本当に始まるのは共和国の成立後である。5国家の統合により、それまで種族ごとに別々だった衣服の寸法体系が混ざり合い、既製服市場は大混乱に陥った──「隣の州で買った上着に尻尾が通らない」時代である。この混乱を収拾すべく各社に規格統一を呼びかけ、私財を投じて全種族数万人の採寸調査を敢行したのが、当時の若き三代目だった。
この調査から生まれたテイル・スリット規格は共和国工業標準に採用され、同社は「星系の寸法を測った会社」として服飾の頂点に立った。採寸データの原本は今も本社地下に保管され、人類学の研究者から「ライラットで最も貴重な身体記録」と呼ばれている。
既製服ブランド「T&T」は星系の量販標準であり、同じデザインを7つの体格レンジと3つの尾径で展開する「7×3方式」で知られる。翼種向けには袖を持たないマント・ポンチョの正装ライン、鱗種向けには摩耗に強い裏地の「スケイルガード」仕様、換毛期には毛抜けが目立たない特殊織りの「モルトウィーブ」──種族別の悩みに一つずつ商品で答えてきた。
特注部門では角・大耳対応のヘルメットと帽子を職人が手がけ、婚礼衣装では各惑星のしきたりに応じた仕立てを提供する。コーネリア式の「純白に蒼」の婚礼装束は、同社の型紙が事実上の標準である。
コーネリア防衛軍の制服・フライトスーツの種族別仕立てを一手に請け負う最大の被服納入企業である。「支給品のフライトスーツに尻尾が通らない」という新兵の定番の悲劇を撲滅すべく、同社は入隊時採寸の標準手順書を軍へ無償提供した──被服担当下士官が着任初日に全隊員の尾径を測って回るのは、この手順書に由来する。
戦時下の現在は防護インナーと耐Gスーツの増産が続くが、同社は「戦闘服であっても、着心地を諦めた服は作らない」と公言する。前線帰りの兵士の「あの内衣だけは文句がない」という評判は、どの広告よりも雄弁だと言われる。
本社の採寸室には歴代の名物テイラーの巻尺が額装されている。最も古い一本は三代目のもので、擦り切れて目盛りがほとんど読めない。新入社員はこの巻尺の前で「寸法は嘘をつかない。つくのは、いつも思い込みである」という一文を唱和してから店頭に立つ。
なお、どの種族の身体にも合う「究極の一着」の設計は同社の非公式な社内コンテストとして百年以上続いているが、いまだ優勝作は出ていない。審査員長の講評は毎年同じである──「よろしい。つまり我々の仕事は、まだある」。