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[ CIS-HQ / CORPORATION — ハナムコ ]
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HANAMUKO

ハナムコ ── 「クウソウは頭の肥やしです」。デパート屋上の電動木馬から始まり、戦闘機の椅子を経て、星系に「電子ゲーム」という言葉を教えた最古のゲーム会社の一つ。

概要 OVERVIEW

ハナムコは、コーネリアに本社を置くゲームメーカーである。その創業はNintendouよりも更に昔に遡り、現存する最古のゲーム会社の一つに数えられる。社是は「クウソウは頭の肥やしです」。荒唐無稽な空想をこそ財産と呼ぶこの一文のとおり、ユーモアと面白さの追求を何よりも優先する社風で星系中から親しまれている。

もっともこの会社の歩みは、社是の穏やかさからは想像も付かないほど波乱に満ちている。子供の乗り物から始まり、戦争の道具を経て、遊びの世界へ帰ってきた。ハナムコの社史は、そのままライラットの娯楽が戦火の中でたどった道のりでもある。

創業 FOUNDING

始まりはデパートの屋上にあった。かつてコーネリアのデパートの屋上には小さな遊戯施設を設ける文化があり、ハナムコはそこで稼働する電動木馬を製作する町工場だった。売りは乗り心地である。子供を乗せるものだからこそ揺れで怖がらせてはいけないという創業者の持論のもと、椅子の緩衝機構にだけは採算を度外視した工夫が注ぎ込まれていた。

転機は偶然に訪れる。大グランベル国の将校が家族連れでデパートを訪れ、子供にせがまれて電動木馬に相乗りした。歴戦の軍人はそこで、自分の乗る最新鋭機よりも木馬の椅子の方が揺れないという事実に気づいてしまったのである。ハナムコの椅子の技術が軍に知られたのは、この一度の親子連れの休日がきっかけだったと伝えられる。

戦時 WARTIME

戦争の規模が大きくなると、デパートの屋上は空爆を恐れて軒並み地下施設へ姿を変え、屋上の遊戯施設もまた次々と姿を消していった。乗り手を失ったハナムコはある時期を境に完全な軍事企業へ切り替わり、航空戦闘機の操縦席を作る専門会社となった。皮肉なことに、この時代のパイロット椅子の評判は上々だった。長時間の哨戒でも疲れない、被弾の衝撃で腰を痛めない。老人の世代にはハナムコを今でも「戦闘機の椅子の会社」と勘違いする者がいるほど、その名は空の男たちに知れ渡っていた。

だが社員たちの情熱は、評価に反比例して冷えていった。子供たちが喜ぶ乗り物を作るはずの会社が、街を火の海にする航空部隊の椅子を作っている。この事実は企業としての成績には代えられないものだったのである。当時の職人が椅子の背面の見えない位置に小さな木馬の刻印を彫り続けていたことは、後年の社史編纂で明らかになった。

転身 REBIRTH

ハナムコは一大決心をする。会社の看板であり最大の収益源であるパイロット椅子の部門を丸ごと売却し、その資金で倒産の危機にあったとあるゲーム会社を買収したのである。周囲は正気を疑ったが経営陣の腹は決まっていた。これからは兵器の一部ではなく、完全に新規の娯楽「ゲーム」を作る。

最初の商品は、買収先の技術者が遊びで作っていた装置だった。潜水艦のソナーの光を曲げて球を打ち合う簡易的なホッケーゲームである。ただし軍用のソナー装置はそのままでは売り物にならない。ハナムコは筐体にテレビ画面を埋め込み、レーダーの光点を再現する8ビットの計算機を画面の隙間に組み込んだ。デパートの地下街に置かれたこの筐体こそ、ライラット星系の人々に「電子ゲーム」という言葉を理解させた最初のゲームとなった。行列は毎日閉店まで途切れなかったと記録されている。

空想の時代 AGE OF KUUSOU

以後のハナムコは、社是のとおり空想を肥やしにヒット作を連発する。黄色い食いしん坊がおばけから逃げながら迷路の実を食べ尽くす「パックンマン」は、キャラクターの愛嬌だけで星系の老若男女を筐体の前に並ばせた。縦スクロール射撃ゲーム「ゼヴィアス」は、ゲーム本編では一切語られない膨大な背景世界と独自言語を裏設定として作り込み、「遊び終わった後も空想が終わらない」という新しい体験を発明した。攻略誌が考察記事で埋まる文化の始まりは、この一作である。

現在のハナムコは家庭用とアーケードの双方で開発を続ける中堅の名門であり、PEGA GamesとNintendouの巨頭対決の陰で、独自のユーモア路線を守り続けている。業界内の評は昔から変わらない。「一番売れる会社ではない。だが一番変なものを作る会社である」。

記録余話 ARCHIVES

ハナムコが売却したパイロット椅子の部門は、後にCDFの航空部隊の椅子を専属で作る別会社「スーパーフラッグ社」として独立した。かつての職人気質は分社の後も健在であり、アーウィンを含む主力機の操縦席には、いまも椅子の背面のどこかに小さな木馬の刻印が残されているという。

また同社は、椅子の時代に培った体感技術とゲーム開発の知見を掛け合わせ、CDFの制式操縦訓練シミュレーター「アサルト」の開発にも直接関わっている。実機と寸分違わぬ操縦席が丸ごと可動する大掛かりな装置であり、新兵たちは初めての宙返りをこの木馬の末裔の上で経験することになる。

つまり、こういうことである。いまもスーパーフラッグ社の作る椅子はコーネリアの宙を守る兵士たちの背中を支え、その疲れた心は、ハナムコのゲームが支え続けているのである。デパートの屋上で子供を乗せていた小さな木馬は、二百年の回り道を経て、いまも同じ仕事をしている。