THE RING
THAT HOLDS
THE WALL
最終防衛ライン「グレートウォール」の全小惑星軌道を管理する巨大環状宇宙ステーション。コーネリア防衛の頭脳にして、星系最大の軍事演習場。
| DESIGNATION | GREAT WALL AREA3 |
| DOMAIN | 軍事拠点(ステーション) |
| LOCATION | GW第3宙域 — Sectorε |
| CLASS | 環状宇宙ステーション |
| RING DIAMETER | 約 210 km |
| ROTATION | 内周リング 約11分 / 周 |
| OPERATOR | コーネリア防衛軍(CDF) |
| CREW | 常駐 約120,000名 |
| FUNCTION | 隕石軌道管制 / 検問 / 演習 |
| FACTION | コーネリア連合共和国 |
| STATUS | ACTIVE — 全区画稼働中 |
秘密兵器の奪還阻止のため 至急コロニーに向かってくれ!-グレートフォックス ペパー将軍からの極秘通信記録より-
OVERVIEW ─ 概要
「隕石は勝手に壁になってくれない。誰かが並べ、誰かが守っている」― AREA3 初代管制司令の就任訓示より
グレートウォールAREA3は、セクターεに浮かぶ巨大環状宇宙ステーションである。最終防衛ライングレートウォールを構成する数万の小惑星の軌道はすべてこのステーションによって管理されており、コーネリア本星への侵攻を食い止める防御壁の「頭脳」と呼ばれる。
その役割は管制にとどまらない。壁を潜る3か所の公式検問口をすべて管理する「門」であり(詳細は軍事の項を参照)、都市戦から艦隊戦までを人工的に再現できるコーネリア防衛軍実戦訓練の総本山でもある。「AREA3を出た部隊は一人前」という言葉は、共和国軍人の共通認識となっている。
そしてこの環には、もう一つの顔がある。壁を成す隕石はステファノーの戦いで砕けた第6惑星の欠片であり、それを並べ続けるこのステーションは星系最大の墓標の管理人でもある。管制官たちは自らの職務を「壁の番」であると同時に「墓守」であると語る。
STRUCTURE ─ 構造・環境
直径約210kmの環状構造体は、外周を軌道管制モジュール、内周を居住・演習区画が占める二重リング構造を持つ。二つのリングは互いに逆方向へ回転しており、角運動量を相殺し合うことで船体の姿勢を精密に固定する。壁へ向けられた補正ビームと測距アンテナ群が寸分の狂いなく隕石を追い続けられるのは、この反転機構によるものである。
なおこの反転式姿勢制御には、ベノム帝国軍の防衛衛星ボルスにも類似の機構が確認されている。ボルス側では艦隊を迎撃するパージ・キャノン(俗称「粛清砲」)の照準に使用されているほか、コアを保護するバリアモジュールの回転機構にも活用されている。同じ技術を防御と攻撃という相反する手段に応用した好例として、軍の教育現場ではよく引き合いに出される。
内周リングは約11分で一周する回転により、外縁の床に惑星並みの体感重力を生んでいる。回転半径が桁外れに大きいため三半規管に届く違和感はなく、住民は自分たちの床が秒速1km近くで回り続けていることを日常では忘れている。設計を主導したのは旧ローザリンド系の艦体工学者たちで、構造材の多くは壁と同じステファノー残骸から精錬された。ステーションそのものが「壁の一部」から造られているのである。
リングの内側には隔壁で仕切られた巨大な演習空間が広がり、市街地を再現したブロックから無重力艦隊戦区画まで、あらゆる戦場を人工的に再現できる。
ステーションの「窓」から見えるのは、第2宙域で磁力に共鳴しながら飛び交う隕石群の帯である。職員たちが「アトラス」の愛称で呼ぶ管制中枢の演算網は、この数万の隕石一つひとつの軌道を24時間体制で監視・補正しており、その演算量は星系最大級とされる。管制が1時間停止すれば、壁には船が通れる「穴」が開くと言われている。
HISTORY ─ 歴史
AREA3の建造はグレートウォール計画の最終段階として始まった。ステファノーの戦いで砕けた第6惑星の残骸をカタリナ軌道のラグランジュ点へキャプチャする大事業には、隕石群を恒久的に「並べ続ける」管制施設が不可欠だったのである。恒久施設が成るまでの間、この役目は臨時編成の管制艦隊が交代で担っており、「並べ役」と呼ばれた艦の乗員たちが初代管制官の母体となった。
建設には旧5国家の技術が注ぎ込まれている。残骸の曳航と軌道投入はスターブレードが一手に担い、環状構造体の設計は旧ローザリンドの艦体工学が支えた。そして数万の隕石を律する軌道演算アルゴリズムの原型は、意外な出自を持つ。旧サルジーナヤ連邦が磨き上げた長距離ミサイルの弾道演算──かつて星系を脅した技術の系譜が、壁を「守る」計算式として生まれ変わったのである(フィチナの項参照)。
竣工の日、最後の隕石が定位置へ収まり壁が一つの環として繋がった瞬間は「閉環」の名で記録されている。建設基地であったカタリナはこの頃には「第二のホームタウン」候補へと変貌しており、壁を築いた星と壁を律する環は、以後一対の存在として発展していくことになる。
もっとも、この輝かしい建設史には影の時代がある。かつての教科書法案の下で「エリア3建設事業」の記事は、縮小されたステファノーの戦いの置き換えとして紙面を飾った──壁の偉業だけを教え、壁の由来を教えない時代である。法案の廃止後この経緯は平和学習の教材として逆に語り継がれることになり、現在のAREA3は学生見学枠が数年待ちという、星系有数の「歴史の教室」となっている。もっとも後述するロードス包囲戦で居住区画が被災して以降、この見学枠は復旧を待って無期限の停止となっている。
IGA戦役は要塞にとって試練の時代であった。正面からの侵攻を仕掛けてこないゲリラ勢力に対し壁は素通りの置物と化し、軍内には維持費を問題視する「壁不要論」さえ起こった。しかし戦役の残した戦訓「艦隊は単独では戦えない」が評価を逆転させる。AREA3の管制能力・カタリナの駐留軍・スターブレードの機動力を組み合わせる三位一体防衛構想が採用され、壁は「動かない置物」から「防衛網の頭脳」へと位置づけを改められたのである。
第2次ライラットウォーズ開戦後はコーネリア防空網の中枢として休みなく稼働している。帝国軍がこのステーションを直接攻撃する作戦を立案しているという情報は幾度も入っており、警戒レベルは開戦以来一度も下げられていない。
SOCIETY ─ 住民・社会
常駐人員は約12万名。軍人・管制官に加え、その家族や民間の整備・補給業者も居住しており、リング内周部は実質的に一つの軌道都市を形成している。この街は「ロードス」の名で呼ばれ、学校も市場も酒場もあり、「星系で最も規律正しい街」と評される。街を貫く環状軌道車両は一周210kmを約2時間で走り、その時刻表はコーネリア標準時に寸分違わず従う。人工採光の朝が毎日同じ時刻に来るため、惑星時差に悩まされるこの星系にあって「時間だけは絶対に狂わない街」としても知られている。
暮らしには重力の勾配がある。外縁の下層街区が惑星並みの重力を持つ一方で、階を上がるほど体は軽くなり、最上層はほとんど浮遊に近い。低重力層には療養病棟と高齢者住区、それに小型種向けの集合住宅が集まっており、「年を取ったら上の階へ」というリング暮らしの慣用句を生んでいる。
興味深いのは開拓庁の出張所が置かれている点である。カタリナ入植団の多くはAREA3で宇宙生活への適応訓練を受けてから降下するため、ステーションは「入植者の門」としての顔も持つ。軍人と入植者が同じ食堂に並ぶ光景は、この拠点の性格をよく表している。
内周の住民にとって、演習は暦である。隔壁越しに響く砲声の質で「今日は市街戦」「今日は艦隊戦」と聞き分ける子供たちの遊びがあり、演習明けの兵士が市場に落とす給料は都市経済の柱の一つに数えられている。
MILITARY ─ 軍事
AREA3の軍事的価値は攻防両面に及ぶ。防御面では隕石群の軌道を「閉じる」ことで壁を完成させ、攻撃面では隕石の軌道を意図的に「開いて」侵攻艦隊を誘い込み、再び閉じて退路を断つという運用が可能とされる。この「壁の呼吸」と呼ばれる戦術は共和国軍の最高機密の一つである。平時に開かれている「口」は3か所の公式検問口のみである。本来の門は直結するグレートウォール航路の検問口だが、コア・ワールド環状線の開通に伴いプロスペロー・ラインとフォルトナ・ラインが壁を跨ぐ接続口を得たため、検問機能はAREA3へ一元化された。門は3つ、鍵は一つ。いずれの通過管制の権限も、管制司令ただ一人に属する。
防衛戦力としては迎撃戦闘機3個航空団と対艦砲台群を擁し、セクターζの主力艦隊スターブレード、カタリナ駐留軍と三位一体の防衛網を構成してきた。スターブレード艦隊が壊滅の危機に瀕した現在、AREA3の管制能力と迎撃戦力への負荷はかつてなく高まっている。3個航空団の筆頭に立つのが管制司令直属のシバ隊であり、隕石群の隙間を飛ぶ宙域戦闘に特化したこの隊が「口」の開閉に合わせて敵を叩く。内周の街を守るのは常駐する地上軍ブルドッグ隊である。
この防衛体制が初めて実戦で試されたのがロードス包囲戦である。外周では帝国軍親衛隊の万能破壊戦艦ブレードバリアが刃を振るい、内周では訓練区画に紛れ込んだ侵攻部隊が陸上戦車ディストラクターを先頭に居住区画へ攻め込んだ。シバ隊が稼いだ時間で本土からレトリーバー隊が駆けつけ、ブルドッグ隊が街路を一区画ずつ取り返してステーションは持ちこたえたが、ロードスの居住区画は三分の一を失った。演習用の都市戦区画が本物の市街戦の入口に使われた事実は、訓練の総本山を自認するAREA3にとって最も苦い教訓として残っている。
訓練の総本山としての機能は、開戦後むしろ強化されている。帝国軍の機体特性と戦術を忠実に再現する専任の仮想敵部隊が編成され、実戦帰りの部隊が持ち帰った最新の戦訓は、その日のうちに演習プログラムへ書き戻されていく。前線と教場の距離がここまで近い施設は星系に他にない。なお開戦後の戦闘において共和国軍は帝国軍の秘密兵器の鹵獲に成功しており、その収容先は本ステーションの隔離区画である。帝国側が奪還部隊の投入を準備しているとの情報を受け、ペパー将軍名義の極秘通信で増援要請が発せられた記録が残る。
情報部が予測する5日後のグレートディッシュのカタリナ来襲に際しては、第1宙域の軌道補正権限をAREA3へ臨時移管する措置が承認されている。発動すればそれは「壁の呼吸」の史上初の実戦使用となる。
ARCHIVES ─ 記録余話
管制する隕石の中には、職員たちが愛称を付けた「名物隕石」が存在する。最大級の一つ「オールドマン」は軌道補正に最も手がかかる頑固者として知られ、退役する管制官は最後の勤務日にオールドマンへ敬礼して職場を去るのが伝統となっている。
演習区画の壁には、ここで訓練を受けた歴代部隊のエンブレムがペイントで残されている。その中には、後に星系の命運を背負うことになる傭兵部隊スターフォックスの前身、ジェームズ・マクラウド隊の古いエンブレムも確認できるという。
毎年のステファノー忌、管制部は巡礼船の航路をあらゆる軍用航路に優先して開ける。閉環以来一度も欠かされたことのないこの慣行の日、当直の管制官は勤務ログの末尾に定型にない一文を打つことを許されている──「本日、壁は静かなり」。