THE TWIN
SUNS OF
THE RIM
互いに狭い軌道で回り合う二つの白い恒星。外縁に独立星系を持ち、通商連合の経済圏と、滅びた神聖帝国の記憶を同時に照らしている。
| DESIGNATION | HACTIVA(γ星)/ PARANID(δ星) |
| DOMAIN | 連恒星(双子星) |
| LOCATION | LYLAT γ・δ — Sectorϻ |
| ORBITAL PERIOD | 約21,960D(約60年)— 主星周回 / 二星の相互公転 約24D |
| STELLAR TYPE | F1型 / F2型 白色中型恒星 |
| SATELLITES | エラダード / キュー / パペトゥーン / セティボス(捕捉) |
| ANOMALY | ⚠ 二星間に異常力場 — 研究対象 |
| SURFACE TEMP | 約7,000°C(両星とも推定) |
| CULTURE | 旧パラニド神聖帝国 信仰対象 |
| FACTION | ハクティバ通商連合 勢力圏 |
| RESIDENT RACES | なし(恒星) |
金貨と亡霊 両方を同じ明るさで 照らしてやがるんだな-通商連合とスターフォックスの交渉通信より-
OVERVIEW ─ 概要
「内側の民は太陽を一つしか持たない。我々は二つ持っている。豊かさとはそういうことだ」― アルピニアの商人の口上より
ハクティバ(Hactiva/ライラットγ星)とパラニド(Paranid/ライラットδ星)は、セクターϻに位置する二つの白色中型恒星である。F1型とF2型、ほぼ同格の二星は互いに狭い距離で周回軌道を持ち、「双子の太陽」と呼ぶべき関係にある。
星系外縁を回りながら独立した星系を保持しており、その重力圏にはエラダード、キュー、パペトゥーンの3惑星と、捕捉された巨大ガス惑星セティボスが属する。この「ハクティバ圏」は内惑星群とは全く異なる文化と経済の圏域であり、ハクティバ通商連合の名は当然、この星に由来する。
GENESIS ─ 形成史
主星ライラット・プライムの強烈な恒星風は、原始惑星系円盤のガスを早期に掻き消し、円盤の塵を外へ外へと吹き寄せた。星系最外縁へ掃き寄せられた塵と氷は、そこに「吹き溜まり」というべき高密度の帯を作り上げる。ハクティバとパラニドは、この帯の中でほぼ同時に成長を始めた二つの収縮核が、いずれも恒星の臨界質量へ達したものと解析されている。中心星の「取り分の残り」がもう一組の太陽を生むというライラットの構図は、恒星形成論の教科書でも屈指の変わり種として知られている。
二つの核の質量がほぼ等しいまま並んで育った例は宇宙でも珍しく、学界では単一の原始星が引き裂かれたとする「分裂説」と、二つの核が独立に成長したとする「双子核説」が長く争ってきた。近年の趨勢を決めつつあるのは、同じ吹き溜まりの帯で生まれながら臨界質量に届かず、惑星に留まったセティボスの存在である。恒星級の濃い塵の中で恒星になり損ねた惑星は、2重の太陽の誕生条件を今に伝える生き証人として双子核説の最大の傍証に位置づけられている。
二星はわずか24日で互いを回り合い、その連星系全体は主星をおよそ60年で一周する。近接連星の重力は円盤の内側を絶えず掻き乱し、内縁の物質を外へ掃き出すため、この星系の惑星は連星を丸ごと囲む周連星軌道でしか安定できない。掃き出しの縁で生まれたキュー(公転99日)、外側から落ちて捕らえられたエラダード(113日)、材料不足の外縁で小さくまとまったパペトゥーン(675日)、そして原始星時代に捕捉されたセティボス。ハクティバ圏の天体はいずれも、この双子の重力が書いた履歴書を持っている。
F型の二星それぞれの磁場はさほど強くない。ところが24日周期で回り合う二つの磁場は互いに巻き付き結び合い、単独星には決して作れない複雑な複合磁場を外縁宙域に張り巡らせている。主星の規格外の磁場を大元とする磁力線の「道」がこの複合磁場と交差する外縁宙域は、かつて星系でも指折りの航行難所だった。天体力学の権威アルフィー・ホルスタインが異常磁場と宇宙回遊生物の回遊周期を解明し星系の地図から「危険航路」の文字を消し去ったのは、まさにこの宙域の観測からである。ただし二星の中間に横たわる力場だけは、その理論をもってしてもなお説明がつかないまま残されている(地理・環境の項を参照)。
GEOGRAPHY ─ 地理・環境
二星は共通重心の周りを優雅に回り続けており、ハクティバ圏の惑星では「二重の日の出」と「二つの影」が日常の風景である。二星の光量バランスは季節のように変化し、キューの暦は「ハクティバの季」と「パラニドの季」に大別される。
最大の謎は、ハクティバとパラニドの中間位置に存在する異常な力場である。特殊な磁場がワームホールを形成しているとの報告があり、外宇宙との接続の可能性を指摘する学者もいる。しかし到達の困難さに加え、通商連合の探査船による執拗な妨害があり、共和国側は現在も状況を掴めずにいる。連合が「何を守っているのか」は、外縁圏最大の禁句である。
星系の最外縁セクターϫには、星系唯一の巨大ガス惑星セティボスが周回している。原始星時代のハクティバに捕捉されたこの星は、今も二星と複雑な重力相互作用で影響し合っており、ハクティバの太陽風がセティボスの極域に描く六角形のオーロラは、外縁圏を代表する天体ショーとなっている。
HISTORY ─ 歴史
遥か昔、この双子の太陽の下にはパラニド神聖帝国が栄えていた。キューを首都とした爬虫類人種の神聖帝国は二つの太陽を神として崇め、δ星に「知識の神パラニド」の名を捧げた。パラノディアンという種族名はいわばこの星の名の末裔である。
神聖帝国が二星へ与えたものは、名前だけではない。キュー下層の壁画は、ハクティバに「民を従える戒律」、パラニドに「自然を凌駕する知識」を対応させ、この二つを太陽から「得た」ものとして描いている(詳細はキューの惑星記録、超文明の項に譲る)。壁画でこの二つの名を表す一字の記号「ओ」「मू」を、双子の太陽の真名とする説もある。星系最古の統治機構と時代を数千年飛び越えた工学。滅びた神聖帝国が残した謎の大半は今もこの双子の光の下にある。滅亡の原因を二星間の力場に求める学説と、遺文の一節「与えられしものは、返さねばならぬ」とを結び付ける研究者は少なくない。
神聖帝国は跡形もなく消滅しその原因は今も不明のままである。だが神聖帝国が消えても太陽は消えない。廃都キューの上に歓楽都市が築かれ、エラダードに工廠の火が入り、パペトゥーンに開拓者が根を張り──双子の太陽は、滅びた信仰と新しい商売の両方を同じ白い光で照らし続けている。
SOCIETY ─ 住民・社会
ハクティバ圏の民にとって、双子の太陽はアイデンティティそのものである。「内側」(ライラット・プライム圏)と「外側」(ハクティバ圏)という区分は、星系の政治・経済を語る上で欠かせない基本語彙となっており、外縁の民は自分たちを「二つの太陽の子」と称する。
パラノディアンたちは今も、δ星パラニドを見上げると何か本能に訴えかけてくるものを感じるという。キュー下層の旧神殿区画では細々と二星への祈りが続けられており、年に一度の「二つの太陽の夜」には歓楽都市の電飾さえも光を落とす。
MILITARY ─ 軍事
セクターϻに正規軍は存在しないが、この宙域は通商連合の探査船と警備艇が常時遊弋する事実上の連合支配宙域である。特に二星間の力場周辺は、接近するあらゆる船が「航行安全上の理由」で退去勧告を受ける。
共和国・帝国の両軍にとって、ハクティバ圏は「手を出せない後背地」である。武器供給を握る連合の本拠地に手を出せば戦争経済が崩壊するため、この双子の太陽の周りだけは開戦以来奇妙な平和が保たれ続けている。戦略研究者はこれを「二つの太陽の停戦」と皮肉る。
ARCHIVES ─ 記録余話
神聖帝国の数少ない遺文には、二星間の力場を指すとみられる「神々の門」という言葉が繰り返し現れる。門の向こうからホルソイドが「天の知恵」を持って訪れた、という神話は、ホルソイドが外宇宙からオーバーテクノロジーを受信したという仮説と奇妙に符合する──もっとも、どちらも証明されたことはない。
古い航海術では、ハクティバとパラニドの位置関係で外縁宙域の「時刻」を読む。二星が重なって見える「合」の瞬間は外縁の民にとって特別な時であり、この時に交わした契約は破られないという。アルペジオのビッグ・ボスですら、「合」の日だけは取り立てを休むと言われている。
学界には、二星を帝国の与えた異名で呼ぶ慣習が今も残っている。論文の慣用句では、ハクティバは「戒律の星」、パラニドは「知識の星」。名付けた民が滅んで三千年余り、名前だけが今も査読を通り続けている。