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[ 22 / LYLAT PRIME — ライラット・プライム ]
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DATABASE RECORD: LYP-0022 — CLASSIFICATION: STELLAR OBJECT — ANOMALY UNDER STUDY
[ 22 / LYLAT SYSTEM — SECTOR-α ]
ライラット・プライム (LYLAT PRIME)

THE BLUE
HEART OF
LYLAT

ライラットα星 ─ 星系主星

星系の全天体の中心に君臨する青き巨星。極大質量でありながら想定寿命をはるかに超えて輝き続ける、ライラット星系最大の謎。

▌ STELLAR SCAN — SECTOR-α ▐
DESIGNATIONLYLAT PRIME(ライラットα星)
DOMAIN恒星(主星)
LOCATIONLYLAT α — Sectorα
STELLAR TYPEB2型 青色大型恒星
AGE40億年以上(理論値と矛盾)
SATELLITES星系全天体(間接的重力支配)
SURFACE TEMP約21,000°C(推定)
SAFE DISTANCEセクターα外周以遠
FACTIONコーネリア共和国 — 観測網 / ブラグザ充填基地
RESIDENT RACES定住者なし — 基地要員のみ(交代制)
ENVIRONMENT INDEX -- 0 / 100
Lylat Prime
Lylat α — B2 BLUE GIANT 星系主星 ── 寿命理論を超えた星
どこの宙で迷っても、あの『光』だけは見失わない。
なにせ 彼は この宙の王者だからね-フロンティア調査隊の隊員へのインタビューより抜粋-
comm visual

OVERVIEW ─ 概要

「我々は太陽の名を星系の名にした。だがその太陽のことを、我々はまだ何も知らない」― 星系天文学会 創立記念講演より

ライラット・プライム(Lylat Prime)は、セクターαの中心に位置するライラットα星。B2型に属する青く巨大な恒星であり、ライラット星系の全天体と星雲は、直接あるいは間接にこの星の重力に従って回っている。星系の名はこの星に由来し、この星の存在がライラット文明の全ての前提である。

そして同時に、この星は星系最大の謎でもある。スペクトル観測によれば極大質量のB2型恒星の寿命は長くて数千万年。だがライラット・プライムは40億年以上輝き続け、今なお完全な安定を保っている。この「あり得ない長寿」に説明を与えられた者は、まだいない。

GENESIS ─ 形成史

ライラット・プライムは、星系の全物質を生んだ原始分子雲の中心収縮核から誕生したと解析されている。収縮の残りは周囲に円盤として広がり、インナーリムの物質帯と各惑星の材料となった。円盤中層に生じた第二の凝縮核が、後に恒星ソーラとして点火した天体である。すなわち星系の惑星も第二の太陽も、元をたどればこの星の「取り分の残り」から生まれている。スペクトル分類はB2型、表面温度は約21,000度。質量は標準的な恒星の十数倍と推定され、この規模の恒星は通常、燃料を数千万年で使い果たす。

問題はここからである。星系の惑星から採取される岩石の年代は最古のもので40億年を超え、コーネリアの安定した地質記録もカタリナの衝突履歴も、「40億年間この位置で輝き続けた主星」を前提としなければ説明できない。恒星物理学の寿命理論と惑星科学の年代測定が真っ向から矛盾する天体は星系広しといえどこの星のみであり、「40億年の矛盾」は星系科学最大の未解決問題として観測が続けられている。学界の仮説は、観測誤差説と、未知の機構により燃料が再供給され続けているとする恒星維持機構説の二つに大別される(仮説を巡る論争史は歴史の項を参照)。

もう一つの規格外が磁場である。この星の磁場は恒星として異例の到達距離を持ち、星系の宙域区分の基準となる「磁場影響指数」の源泉はこの磁場にほかならない。アウターリムの定義(指数40以下)も、回遊生物が航法に用いる磁力線の通り道も、遡ればこの一つの磁場に行き着く。惑星として生まれ恒星として目覚めたソーラと、恒星として生まれながら恒星の寿命を無視して輝き続けるプライム──星系の二つの太陽は、恒星物理学の教科書を両端から同時に破っていると評される。

GEOGRAPHY ─ 地理・環境

巨大恒星ゆえに出力される熱量は凄まじく、周回する惑星のほとんど全ては恒星圏セクターαから大きく離れた軌道を公転している。星間航路図や軍事勢力図にライラット・プライム自身が滅多に描かれないのはこのためで、星系の民にとってこの星は「地図の外にある中心」という奇妙な存在であり続けてきた。

セクターαそのものは、星系で最も広く、最も何もないセクターである。惑星も星雲も存在せず、あるのは強烈な光と太陽風、そして耐熱装備の観測施設が数基のみ。この星の青い光は星系のどこからでも見え、各惑星の空の色は、ライラット・プライムの光と大気の対話が決めている。

その「何もない」セクターαにおける唯一の恒久拠点が、恒星至近軌道を巡る「ブラグザ・ソーラークリスタル充填基地」である。ソーラークリスタルは特定条件下で恒星の放射エネルギーを吸収・保持する特異な結晶であり、至近軌道で「充填」されたクリスタルは、いわば持ち運べる太陽として星系各地へ出荷される。辺境入植地の越冬電源から観測機器、高出力機器の動力まで用途は幅広く、セティボス圏のエンバーガスが「星系の燃料」なら、ブラグザのクリスタルは「星系の蓄電池」である。基地は精製・充填・出荷を一貫して担い、13層の耐熱遮蔽殻の内側で、職員たちが標準時6週間交代の勤務に就いている。

勤務は「星系で最も日焼けする配属」と揶揄される過酷なものだが、職員手当は全公務員中最高額とされ、志願者は絶えない。帰任者の定番土産は基地の売店で売られる「本物の太陽で焼いたクッキー」であり、味は普通だが、袋の煽り文句に嘘は一つもない。

HISTORY ─ 歴史

ライラットへ最初に到達した入植船団の記録には、「青い灯台を目指して航行した」という一節が残る。外宇宙から見たライラット・プライムの輝きは、母星を失った移民たちにとって文字通りの道標だった。星系暦の元年が「青い灯台を視認した日」に置かれているのはその名残である。

科学観測の時代に入り、この星の年齢矛盾が発見されると、学界は大きく二分された。観測誤差とする保守派、未知の恒星維持機構を想定する革新派──論争は百年以上続いたが、決着はついていない。一部の研究者はオーバーロード文明との関連、すなわち「この星は誰かに延命されている」という大胆な仮説を口にするが、学会でそれを言うには今も勇気がいる。

ブラグザ基地の起源は、復興期のワープドライブ航路網建設に遡る。全ての航路がセクターαを迂回する設計である以上、恒星風の精密観測は航路の安全そのものであり、臨時の観測前哨が常設化されたのが始まりである。ソーラークリスタルの発見は偶然の産物だった。至近軌道に係留していた観測ブイの電源が、設計寿命を過ぎても一向に減らないことを不審に思った観測員の報告が端緒となり、ブイの結晶部品が恒星エネルギーを蓄えていることが判明。観測所はほどなく精製・充填設備を備えた基地へと拡張され、「何もないセクター」は星系のエネルギー供給網の一角を担うこととなった。

SOCIETY ─ 住民・社会

住民はいないが、ライラット・プライムほど星系の文化に浸透した天体もない。あらゆる暦はこの星を基準に刻まれ、共和国の国章の中心にも、帝国の軍旗にも、意匠を変えたこの星が描かれている。敵対する両陣営が同じ太陽を掲げて戦っているという事実は、この戦争の悲劇性を象徴していると言えるだろう。

古い民間信仰では、ライラット・プライムは「見ている星」と呼ばれる。星系のどこにいても見えることから、誓いはこの星に向かって立てるのが習わしであり、船乗りたちは今も出航前に青い光へ杯を掲げる。

MILITARY ─ 軍事

セクターαは戦略価値が低く、両軍とも戦力を置いていない。熱量と太陽風が艦隊行動を許さず、隠れる場所も奪う物資もないためである。皮肉にも、星系の中心こそが戦争から最も遠い場所となっている。

ただしCDFは太陽風の観測データを航行警報と通信網の維持に利用しており、観測施設の維持は後方支援任務の一つに数えられている。ライラット・プライムの大規模フレアは星系全体の通信を麻痺させうるため、「太陽の機嫌」は今も全艦隊の作戦条件である。

この「戦争から最も遠い場所」が戦場となったことが、ただ一度だけある。「セクターαの攻防」として記録される一連の戦いである。開戦後間もなく、定期補給船に偽装した帝国の特殊部隊がブラグザ充填基地へ接舷し、職員を人質に基地を占拠したのである。狙いは充填済みソーラークリスタルの備蓄と基地そのものの補給拠点化にあり、後の解析はこの占拠が単独の襲撃ではなく、帝国第7師団による宙域侵攻計画の先遣だったことを突き止めている。艦隊は熱量に阻まれて近寄れず、通信はフレアのたびに途切れ、そして「αを挟んだ増援は間に合わない」──セクターαの常識の全てが、この時ばかりは占拠側の盾となった。

奪還作戦の指揮官ビリー・シールズは、その常識の裏を読んだ。大規模フレアの予報に全部隊を合わせ、通信麻痺で基地の外部連絡が完全に死ぬ「窓」の間に、フレアの放射へ艦影を隠して恒星側から強襲したのである。基地の監視員から見れば、迫る奪還部隊は太陽を背負った影の輪郭でしかなかった──後に「日食作戦」の通称で呼ばれる所以である。照明の落ちた充填区画での白兵戦の末、人質は全員無事に解放され、基地は奪還された。占拠部隊がただ一隻脱出させた輸送艇は、撤退中にフレアへ呑まれて消息を絶っている。「太陽が取り返した」というのが、ブラグザの職員たちの語り草である。以来、基地には小規模な常駐警備隊が置かれ、「太陽の懐で気を抜くな」が申し送りの決まり文句となっている。

だが攻防はそれで終わらなかった。基地の奪還と前後して、第7師団の艦隊本隊が宙域の外縁へ進出したのである。旗艦は後の超弩級要撃艦サルバドーラの先行機にあたる大型艦〈ペルシカ〉。正面からの艦隊戦は数で劣る共和国側の劣勢に傾いたが、戦局は雇われ遊撃隊スターフォックスの強襲で一変する。護衛網を潜り抜けた遊撃隊はペルシカの艦内へ侵入し、エネルギー炉の中枢を内側から破壊してみせたのである。旗艦の大破をもって侵攻は瓦解し、太陽の宙域は再び「戦争から最も遠い場所」へ戻った。

ARCHIVES ─ 記録余話

観測施設の職員たちの間には「青の囁き」と呼ばれる現象が語られている。長期滞在者が、フレアの周期に合わせて誰かの声のようなものを聞くというものだ。医学的には低周波振動による錯覚とされるが、退役した観測員の多くは、なぜか二度とこの星の近くへ戻りたがらない。なお日食作戦の際に人質となった職員の一人は「囁きが一番うるさかったのは、あの占拠の夜だった」と証言している。真偽はともかく、ブラグザの新人がこの話を聞かされるのは、決まって夜勤の初日である。

40億年の矛盾について、ある古い研究者はこう書き残している──「答えは二つに一つだ。我々の恒星物理学が根本から間違っているか、あるいは、この星系そのものが誰かの作品であるかだ」。この一文は論文の脚注に埋もれていたが、コンタクト信号の発見以来、たびたび引用されるようになった。