概要 OVERVIEW
フロストリーフ・ボトラーズは、セクターⳣの氷晶帯「フロスト・リーフ」に本拠を置く飲料・製氷メーカー。採氷業者──通称「アイスランナー」──として最大の採掘権を持ち、太古の星間氷を融かした超軟水「リーフウォーター」と、それを原料とする清涼飲料で星系市場の頂点に立つ。
「氷は嘘をつかない」を社是とし、製品の成分表示には採氷した氷塊の座標まで印字される。フロンティアの水売りから星系一の飲料王へ──同社の歩みは、辺境経済の成功譚として必ず引き合いに出される。
フロストリーフ・ボトラーズ ── 氷晶帯の氷を「星系で一番うまい一杯」に変えた飲料メーカー。看板商品の缶飲料『ファルコン・スロップ』を知らない者は、ライラットには(ほぼ)いない。
フロストリーフ・ボトラーズは、セクターⳣの氷晶帯「フロスト・リーフ」に本拠を置く飲料・製氷メーカー。採氷業者──通称「アイスランナー」──として最大の採掘権を持ち、太古の星間氷を融かした超軟水「リーフウォーター」と、それを原料とする清涼飲料で星系市場の頂点に立つ。
「氷は嘘をつかない」を社是とし、製品の成分表示には採氷した氷塊の座標まで印字される。フロンティアの水売りから星系一の飲料王へ──同社の歩みは、辺境経済の成功譚として必ず引き合いに出される。
創業者は氷晶帯の一介のアイスランナーだった。当時の採氷は推進剤と生活用水向けの「量り売り」が全てだったが、創業者は氷塊ごとに味が違うことに気付き、飲用としての等級分けを始める。「同じ氷はひとつもない。ワインと同じだ」──この売り文句が凪の市の商人たちに刺さり、瓶詰の「リーフウォーター」はフロンティア名物となった。
星系規模への飛躍は、炭酸飲料『ファルコン・スロップ』の発売による。もとは凪の市の屋台で船乗り向けに売られていた「目の覚める一杯」のレシピを買い取り、缶入りで量産したもので、発売から十年で星系売上首位に駆け上がった。以降、本社は今も氷晶帯の作業ステーションに置かれたまま──「水源より遠くに本社を置かない」が創業家の家訓である。
看板は言うまでもなく『ファルコン・スロップ』。強炭酸と柑橘系の刺激、そして「翼が生える」と評される独特の飲み口で知られ、種族別に浸透圧を調整した5バリエーションが展開される。特に灼熱のセクターαで働く充填基地職員と、眠らないセクターθの三交代労働者にとっては垂涎の的であり、「αの自販機は星系で最も稼ぐ自販機」というのは業界の有名な事実である。
このほか、高級氷「リーフロック」はキューのカジノバーで一杯分ずつ競りに掛けられ、軍向けには電解質補給飲料「スロップ・タクティカル」を納入。前線では「撃墜数より空き缶の数を数えろ」というジョークがあるほど、兵士の傍らに転がっている。
物流はブラックカーゴ社とホワイトファング急便に委託し、戦時下でも両陣営の市場へ供給を続けている。帝国占領地でもファルコン・スロップは普通に売られており、「戦線は缶の値段にしか影響しない」と揶揄される。
なお同社の株式の約3割はハクティバ通商連合系の投資体が保有している。氷晶帯の採掘権益の安定は、連合がフロンティア・ライン経済圏を掌握する布石の一つとみられており、共和国公正取引委員会が資本構成の調査を進めているが、「星系一の清涼飲料を止める勇気のある役人はいない」というのが実情である
『ファルコン・スロップ』の名の由来には諸説あるが、最有力は「屋台の主人が贔屓にしていた、派手好きな若い鳥型パイロットの渾名」説である。当人が誰だったのかを社は明かしておらず、あるエースパイロットは取材のたびに「さあな。だが味の趣味はいい」とだけ答えている。
氷晶帯の採氷船には、新人が初出荷の氷で仲間に一杯ずつ振る舞う「初氷の儀」という風習がある。同社の重役会議も、今なお最初の議題の前に全員で一杯の氷水を飲むことから始まるという。