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[ CIS-HQ / CORPORATION — ブラックカーゴ社 ]
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BLACK CARGO

ブラックカーゴ社 ── 「黒い箱は約束の印」。9本のメジャー航路すべてに定期便を走らせる星系最大の総合物流企業。ライラットの経済は、この黒い輸送箱の流れを血流として生きている。

概要 OVERVIEW

ブラックカーゴ社は、星系全域をカバーする最大手の総合物流企業。メジャーワープドライブ航路9本の全てに定期コンテナ便を持ち、惑星間の企業間物流から個人の引越しまで、「動くもの」のほぼ全てを運ぶ。特徴的な漆黒の規格コンテナ「ブラックボックス」は星系の港の風景そのものである。

創業はバステトイドの運び屋一族。定住を持たず星系中に散らばる同族のネットワークを束ね、「どこにでも猫はいる。ゆえに、どこへでも届く」という単純な原理を星系最大の企業に育て上げた。

沿革 HISTORY

前身は航路建設時代の資材運搬請負である。ベクター・プライム社の航路工事に資材を届ける「工事現場までの最後の一区間」を担ったのが始まりで、「道ができる前から、道を走っていた」が社史の自慢である。航路網の全通とともに定期便網をいち早く敷き、以後一世紀以上、物流首位の座を譲っていない。

社名の由来は、創業一族が用いた煤塗りの断熱コンテナである。当時は「うさんくさい黒箱」と警戒されたが、中身を狙う賊が「どの箱に何が入っているか外から全く判らない」ことを嫌って襲撃を避けたため、黒は安全の色として定着した──「隠すことが、守ること」。同社のセキュリティ哲学は最初の一箱から変わっていない。

主力事業 SERVICES

中核は規格コンテナの定期幹線輸送であり、精密機器・生鮮・生体・危険物の別に応じた特殊コンテナ群を擁する。フロストリーフ・ボトラーズの飲料やブレッドバスケットの食糧など、星系の生活物資の大動脈は事実上同社が握る。個人向けでは「黒猫便」の愛称で親しまれる宅配部門が有名で、再配達依頼の口笛サイン──二短一長──は都市生活の常識である。

保険部門「ブラックカーゴ保証」は、紛失時に「中身を問わず申告額で即日補償」という豪快な商品で知られる。悪用を試みた詐欺師が同社の調査部によって例外なく立件されてきた歴史も、また有名である。

「中立」の輸送 NEUTRALITY

第2次ライラットウォーズ開戦後も、同社は共和国圏・帝国占領圏の双方で操業を続ける数少ない企業である。占領地の市民への生活物資輸送は人道任務として国際的に容認されており、「黒い箱が来なくなった街から、人は逃げ始める」と言われるほど、その定期便は民心の指標となっている。

一方でCDF情報部は、同社の占領地向け「人道枠」コンテナの一部に、通商連合経由の軍需部材が紛れている可能性を継続監視している。同社の「中身を見ない」原則は人道輸送の信頼の根幹であると同時に、あらゆる勢力にとって最も都合のよい抜け道でもある──監視報告書の結語は毎回この一文で終わっている。「黒い箱は、開けるまで白でも黒でもない」

記録余話 ARCHIVES

配達員の制帽には創業以来、小さな鈴が付いている。「猫に鈴」の自虐だが、実務上は狭い船内で互いの位置を知らせる安全具であり、港で鈴の音がすれば荷が着いた合図──星系の子供が最初に覚える「音の意味」の一つである。

社の応接室には、創業時の煤塗りコンテナが一つだけ置かれている。中身は今も非公開。歴代CEOだけが開けることを許されるが、開けた者は皆、同じ顔で戻ってくるという──「なるほど、うちの会社はこれを運んだのか」という顔で。