THE IRON
GIANT
戦闘機を丸ごと戦艦へスケールアップし、さらに戦闘ロボットへの変形機構まで与えられた、ライラットで唯一の可変戦艦。かつて皇帝自身が艦長として戦場に立ち、最後はフォルトナの大地でその役目を終えた。
| DESIGNATION | BRAIN CRUSHER mk-Ⅳ / ブレイン・クラッシャーmk-Ⅳ |
| CATEGORY | 超大型可変戦艦 — 星系で唯一の艦種 |
| LINEAGE | 戦闘機 mk-Ⅲ の直接スケールアップ |
| FORMER CAPTAIN | 皇帝アンドルフ(艦長兼司令官) |
| LAST OPERATOR | アンドリュー・オイッコニー 私設軍旗艦 |
| TRANSFORMATION | ⚠ 頭部・両腕 3パーツ構成「戦闘モード」 |
| PRODUCTION | 量産型「デスバブーン」— 小型・変形機構なし(欺瞞用) |
| ARMAMENT | 対空ビーム(指)・トラクター照射(掌)・ハイパーレーザー主砲(口内) |
| STATUS | ⚠ 大破 — フォルトナ地表に放棄 |
俺は今、暗闇から迫り速やかに死を運ぶ影だ! 終わらせてやるぞぉ フォックス!-フォルトナ戦役 傍受通信記録より-
概要 ─ OVERVIEW
"戦艦に殴られた"と詳報にはある。記載の誤りを疑い確認を求めたところ「戦艦から手が生えて殴ってきたのです」と返ってきた― CDF参謀部 フォルトナ戦役戦闘詳報 査閲官の注記より
ブレイン・クラッシャーmk-Ⅳ(Brain Crusher mk-Ⅳ)は、帝国軍の超大型可変戦艦。ウルフェンⅡの試運転を兼ねたボルス上空の軍事演習で負傷したアンドリュー・オイッコニーがその雪辱を晴らすべく皇帝に直談判し、フォルトナの恐竜兵器化施設の再建および現地調査任務に赴く際、皇帝から貸与された艦船がこれである。
本艦はオイッコニーの私設軍隊の旗艦であると同時に、かつて皇帝アンドルフ自身が艦長兼司令官として戦場に立った艦でもある。歴戦の旗艦をわざわざ甥に与えたという事実は、皇帝がこの調査任務を決して軽んじていなかったことを物語る証左とみなされている。
開発系譜 ─ LINEAGE
この戦艦は、通常運用される艦船とは成り立ちが大きく異なる。前身にあたる「ブレイン・クラッシャーmk-Ⅲ」はアーウィンやウルフェンと同系統の戦闘機に分類される機体であり、mk-Ⅳはそれを直接スケールアップ、すなわち機体構造ごと巨大化して戦艦化したものである。
このコンセプトは、除雪作業ロボット「コロバザール」を巨大化させて都市制圧兵器へ仕立てたグランガと同一である。「スケールアップによる戦力化」という発想は、帝国が水面下で戦力を整えていた構想のかなり初期の段階から存在したロールモデルであったと解析されている。
変形機構と兵装 ─ TRANSFORMATION
もっとも、この戦艦の特筆すべき点は、開発過程や「皇帝の旗艦」という肩書きとは別のところにある。なんと本艦は艦体が丸ごと可変し、頭部と両腕の3パーツ構成の「戦闘モード」へ、すなわち戦闘ロボットへと変形する機構を持つのである。変形機構を持つ戦艦はライラット広しといえど本艦のほかに確認されておらず、共和国側の艦種分類では本艦ただ一隻のために「可変戦艦」の区分が起こされている。
例にもれず、この艦は設計者アンドルフの趣味による機能が満載である。巨大船舶が丸ごと顔と拳に変形し、遠隔操作で相手を殴り倒す。普通なら誰も考えないような基本戦法がベースでありながら、指先からの対空ビーム、掌からのトラクター照射による捕縛からの握り潰し、口の中に仕込まれた主砲によるハイパーレーザーと兵装は多岐にわたる。
量産型「デスバブーン」 ─ DEATH BABOON
フォルトナ戦役の艦隊記録には長らく説明のつかない矛盾があった。旗艦ブレイン・クラッシャーmk-Ⅳの艦影が同時刻に複数の座標で観測されているのである。答えは戦後の残骸調査で判明した。オイッコニーの私設軍隊は mk-Ⅳ とほぼ同一のシルエットを持つ小型の量産艦「デスバブーン」を複数隻運用しており、どれが旗艦か分からなくすることで敵の指揮判断を混乱させていたのである。変形機構を持たない廉価な艦体ながら欺瞞の効果は本物で、共和国援軍は戦役の中盤まで旗艦の特定に失敗し続けた。
設計案の段階では、デスバブーンにも「手」や「武器」へ変形する機構を与える構想があったという。頭部となる旗艦が振るう「無数の腕」として周囲を飛び交い、全方位から同時に殴りかかるオールレンジ攻撃をする構想であるが、予算不足によりこれは実現しなかったようだ。
識別に苦しんだ前線部隊は変形した一隻だけを「本物」と呼んで区別した。転じて現在のCDF艦艇識別課の教材では、デスバブーンの項に「変形するまで全部旗艦だと思って倒すように」という注記が添えられている。
戦歴 ─ フォルトナ戦役 SERVICE
ブレイン・クラッシャーmk-Ⅳはセクターλのフォルトナ惑星圏で艦隊と共にフォックス・マクラウドと交戦するも、駆けつけたスターフォックスの僚機および共和国援軍により一時戦線を後退させ、フォルトナ地表のトアルシアン大渓谷に潜む侵攻本隊と合流して立て直しを図った。数で勝る部隊がフォックス率いるスターフォックスに劣勢を強いられたのは、ひとえに練度の違いによるものであると、友軍に駆けつけたビル・グレイ中尉は語っている。
オイッコニーの陽動に乗り、フォルトナ地上へ単騎で降下したフォックスだったが、アーウィンの機体制御をつかさどるG・ディフューザーが誤作動を起こし、機体が動かなくなる憂き目にあう。同時刻、セクターλではオイッコニーの部下が誤ってスペースオベリスクの一体を破壊。周囲の宇宙生物は一斉に凶暴化し、宙域は蜂の巣を突いたような大混乱に陥り、共和国軍もフォックスの救助どころではなくなってしまった。かつての曳航未遂事件以来オベリスクに付されてきた「触れてはならない」の但し書きが破壊の場合に何を招くのか、この日、両軍が同時に思い知ることになった。
本来、フォルトナへの地上降下作戦は生態系の保護や危険度の高さなど、様々な観点から許可を要するものである(惑星記録によれば軍規上の「最終手段」に分類される)。だがこれを地上調査の千載一遇の好機とみたZ・Z・ペパーの提案により、オイッコニーの私設軍隊の潜むエリアを暴くこと、そしてフォルトナの現地調査を行うことの2点を目的に据えたミッションとして、フォックスは行動を起こすこととなる。現地で出会ったアソーカ族の王子との邂逅や、フォックスの単独任務の詳細については別の記録に譲る。
フォックスに追い詰められたオイッコニーは、最終手段に出る。変形スイッチを押し、「鉄の巨人」と化した旗艦とともに、生身のフォックスとの直接交戦を図ったのである。オイッコニーの圧倒的有利に見えた戦況だったが、予想外の援軍が彼に襲いかかる。王子トリッキーの呼びかけで、フォルトナの恐竜族たちが駆けつけたのである。先陣を切ったスノーホーン族の戦士2人がその牙で巨人の左腕を貫き、右腕はアソーカ族の怪力とハイト族の巨躯を足掛かりにした空中連携に叩き伏せられた。頭突きの衝撃で崩れた足場から転落しかけたフォックスとトリッキーはクラウド族の青年に救われ、そのまま旗艦内部へ突入。二人の連携でコックピットを制圧されたオイッコニーは、ついに観念したのであった。
この騒動で旗艦ブレイン・クラッシャーmk-Ⅳは大破し、お役御免となった。制御を失った艦体の転倒が駐屯基地そのものを消し飛ばすことになった顛末は、調査記録に詳しい。オイッコニーは連行中に救援へ駆けつけたスターウルフにより奪還され、そのまま帝国の中枢へ帰還している。彼の持ち帰った報告に軍会議では怒号が飛び交う場面もあったが、ついに手に入れた「スピリット」の確証に対し、皇帝とケローン大提督は惜しみない称賛の言葉を贈ったと傍受記録は伝えている。なおCDF参謀部は本戦役の分析において、仮にオイッコニーがマニュアルを事前に熟読して前述の追加兵装を使いこなしていた場合、あるいはかつてのペパーのような運動神経を持っていた場合、フォックスに勝ち目はなかったと推測している。
記録余話 ─ ARCHIVES
実は、ブレイン・クラッシャー系列の最初の機体「mk-Ⅰ」は、アンドルフ本人が乗るために作られたものではなく、友人のために作られたオーダーメイド機体だったとされる。その相手はなんとZ・Z・ペパー。白兵戦で無敵の強さを発揮した彼も、精鋭部隊長時代の現場指揮では戦闘機での交戦を何度か経験しており、「もっと直感的で操作しやすい機体はないものか」と旧友に愚痴をこぼしていたという。後に軍事兵器開発の方針を巡って袂を分かつ二人の、仲が最も良かった時代の逸話である。
アンドルフは、学生時代に大学で流行していた格闘ゲーム「バルチャー・ファイター」から着想を得て、無線機を同期させ喧嘩と同じ感覚で対象に攻撃を加える「ボコリングシステム」を考案。格納庫の修理待ち機体を無断で改造し、史上初となる「白兵戦ができる空中戦闘機」ブレイン・クラッシャーmk-Ⅰを開発したのである。
ペパーは、大胆な変形をする上に自身の拳と同期して対象を叩き潰せるこの機体に大喜びしていたが、搭乗を重ねていくにつれ、致命的な問題に気づいてしまう。可変時にはまず機体が180度回転し、その上で搭乗席がさらに180度回転、椅子が折りたたまれて操縦者がボクシングポーズで直立する構造となっていた。すなわち変形のたびに椅子が縦方向に一回転するため、変形を多用するヒットアンドアウェイ戦法を繰り返したペパーは、凄まじい乗り物酔いに襲われることになったのである。
結局、この機体が実戦で使われたのは初陣の一回だけであった。だがこの時の航空データは、後のG・ディフューザーシステムの原型となる半重力機構の設計思想に少なくない影響を与えることになる。また後年、ペパー将軍の専用機として開発された機体「エアフォース・ヴァウ」は、このmk-Ⅰとよく似たコンセプトの可変機構を持つ。あの戦闘機がペパーに与えた影響はかなり大きかったようである。