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[ SECTOR-Ͼ / SETEBOS III — セティボスⅢ ]
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DATABASE RECORD: STB-0015-III — CLASSIFICATION: CLOSED NATION — REMOTE OBSERVATION ONLY
[ 24-Ⅲ / LYLAT SYSTEM — SECTOR-Ͼ ]
セティボスⅢ (SETEBOS III)

THE VERDANT
MOON

ガロウ連邦の本星 ─ 眠れる虎の庭

巨大ガス惑星セティボスを約10日で巡る惑星級の海洋衛星。潮汐熱に温められた海と熱帯のジャングルが広がり、セティボス圏で最も環境の整った美しい星である。鎖国国家ガロウ連邦の本星であり、外界がその素顔を知る手段は遠距離観測とフィチナへ亡命した一団の証言しかない。現地では「アルケイディア」と呼ばれる。

▌ SATELLITE SCAN — SECTOR-Ͼ ▐
DESIGNATIONSETEBOS III / セティボスⅢ
LOCAL NAMEアルケイディア(連邦のみが用いる非公式呼称)
DOMAINセティボス圏 — 第2衛星
LOCATIONSector Ͼ-1 — ガロウ連邦管理宙域
BODY TYPE惑星級大型衛星 — 海洋型(直径はアクアスを上回る)
ORBITセティボス周回 約10標準日 — 潮汐固定 / Ⅱ・Ⅳと1:2:4の軌道共鳴
SHADOW「影の刻」— セティボスの影に入る約3標準日の夜
PRIMARY STARSハクティバ/パラニド(いずれも遠く小さい)
ATMOSPHERE窒素・酸素 — 呼吸可 / 高温多湿
CLIMATE熱帯性 — 潮汐加熱による温暖 / 台風・モンスーン多発
FACTIONガロウ連邦 — 鎖国中
CAPITAL首都ネオ・ガロウ / 総督府(アルケニア群島)
STATUS立入不可 — 無断進入は対空砲撃の対象
ENVIRONMENT INDEX -- 84 / 100(森林を除く)
Setebos III
THE VERDANT MOON — HOMEWORLD OF THE GAROU ガロウ連邦の本星 ── 眠れる虎の庭
あんたら、よぉ聞きな。アルケイディアの森の光は街灯りじゃない
ありゃ全部「口」なんじゃよ…-CDFがフィチナの古老から収集した連邦の言及より-
comm visual

OVERVIEW ─ 概要

「あの星は美しい。だから誰も帰ってこない。理由は3パターンくらいあるがな」― セティボス圏を航行する貨物船乗りの言い回し

セティボスⅢは星系唯一の巨大ガス惑星セティボスの第2衛星である。衛星とはいえ大きさは惑星級であり、直径は海洋惑星アクアスを上回る。海洋が表面の大部分を占め、陸地は火山性の群島と熱帯のジャングルに覆われた大陸片から成る。セティボス圏で最も環境の整った美しい星と評される一方で鎖国国家ガロウ連邦の本星でもあり、外界の者が地表に立った記録は約250標準年前の鎖国以来存在しない。

共和国の星系図には「セティボスⅢ」と表記されるが、現地では「アルケイディア」の呼び名が通用しているようである。アクアスやゾネスと同じく住民だけが使う呼称であり、現時点では非公式の名にすぎない。それでも後述するフィチナの亡命者の古老たちがこの星を例外なくアルケイディアと名指しすることから、少なくとも現地ではこちらが主流の呼び方とみられる。セティボス圏の他の大型衛星にも同様の現地名が伝わっており、その一覧はセティボスの項に記録がある。

本記事の内容はCDFの遠距離観測と衛星写真、フィチナへ亡命した一団の子孫から集められた証言、そして近年の一件で得られた配信映像の解析に基づく。連邦が自らの星について語ったことは一度もなく、以下の記述の多くは推定である。

GENESIS ─ 形成史

セティボスの大型衛星群は、若い惑星が吸い集めたガスと塵が本体の周囲に作った周惑星円盤から集積したと考えられている。セティボスⅢはこの円盤の中でも氷と岩石の豊富な領域に生まれた衛星であり、集積した氷が後の海の源となった。惑星級の質量を獲得できた理由は、円盤内で最も物質の密度が高い軌道帯を占めていたためと解析されている。

この衛星の気候を決定づけているのは太陽ではなくセティボスである。第1衛星セティボスⅡと第3衛星セティボスⅣとの軌道共鳴が公転軌道のわずかな歪みを保ち続けており、セティボスの巨大な潮汐力が地殻を絶えず歪ませることで内部を加熱している。この潮汐熱は遠く小さな二つの太陽から届く熱を大きく上回り、尚且つセクターϾ宙域に広がる星間塵の靄が太陽光を増幅する作用をもつことで、外縁宙域にあって熱帯性の気候を成立させている。地殻加熱は火山活動の源でもあり火山群島が集中する「アルケニア群島」はその直接の産物である。同じ機構で温められた隣の衛星セティボスⅣが「温められた衛星」と分類されるのに対し、海と大気を持つセティボスⅢではその熱が海流と嵐へ姿を変えている。

溶けた内部は衛星に固有の磁場をもたらしている。セティボスの放射線帯の只中を巡りながら地表の生命が焼かれずに済んでいるのはこの磁場の傘があるためであり、大型衛星の中で生命に満ちた星がこの一つだけである理由の一端はここにあると解析されている。

GEOGRAPHY ─ 地理・環境

公転周期は約10標準日であり、自転はセティボスに潮汐固定されている。すなわち衛星は常に同じ面を惑星へ向けており、惑星を向いた「表の半球」ではセティボスの縞模様の巨体が天球の大部分を覆って決して沈まない。太陽であるハクティバとパラニドは小さな光点として見えるにすぎず、反対側の「裏の半球」の空にセティボスが昇ることは永遠にない。二重の太陽の配置とセティボスの影という三重の条件によって地表の光量は大きく変動し、一度惑星の影に入ると標準時で3日間は夜が明けない。住民がこの期間を「影の刻」と呼ぶことは古い証言で確認されている。

軌道の関係も特異である。セティボスⅡ・Ⅲ・Ⅳの公転周期は約5日・約10日・約20日と1対2対4の比で揃っており、Ⅱが4周しⅢが2周する間にⅣがちょうど1周する。この関係の帰結として三つの衛星がセティボスから見て同じ方向に並ぶことは決してなく、このような複雑な軌道共鳴は航行局の資料で「三重共鳴」と呼ばれる。表の半球の住民にとってⅡとⅣは空を横切る二つの時計であり、暦の項で触れるように連邦の暦はこの並びを基準にしていると推定される。

地表の大部分は温かな海で構成されている。広大な海洋と熱帯のジャングルが大気へ絶え間なく水蒸気を供給しているため、大気圏では常に多数の台風が発生している。衛星写真には季節を問わず渦を巻く雲が写り込み、モンスーンと突発的な豪雨は日常の気象とみられる。それでも「美しい」という評価が揺るがないのは、嵐の合間に現れる青い海と緑の陸地の対比がセティボス圏の他の天体には存在しないものだからである。

火山性の島々が集中するアルケニア群島は、連邦の総督府兼軍事要塞が置かれた地である。首都ネオ・ガロウはこの群島から離れた大陸片の沿岸に位置し、衛星写真で見る限りではビルが整然と立ち並ぶ近未来都市が築かれている。都市の上空には嵐を遮る透明な防護ドームの輪郭が確認されており、古い証言にある「ドーム都市」はこの構造を指すものと解釈されている。

ECOLOGY ─ 生態

複雑な昼と夜を持つ星であるが、とりわけ厄介とされるのはその生態系の高い攻撃性である。光量の乏しい時期が繰り返し訪れるため、この星の熱帯性植物の多くは光合成だけに頼らない。食虫植物のような捕食者としての側面を併せ持つ生態が広く発達しており、植物と動物の境界線は極めてあいまいである。自発的に動く植物も多く、虫を集めるために粘液性の捕食器官や発光器官、さらには眼点を備えている種も存在する。影の刻にはジャングル全体が青白く輝き、軌道上からは街の灯りと見分けがつかないほどである。

よく引き合いに出されるフォルトナの密林は「文明を拒絶している」と形容されるが、セティボスⅢの森は拒絶ではなく積極的に「捕食」を試みてくる。原始の森の威圧感や霊的な畏敬を感じさせる森というよりも、より直接的な脅威として立ちはだかる存在である。外見は美しいがこの星の植物は大型動物も捕食する。住民が基本的に森へ近づかないことに加え携帯端末と同じ感覚で「マイ火炎放射器」を所持していることは、この星の危険さを端的に表している。証言によれば火炎放射器は成人の証として贈られる品であり、機種の良し悪しが話題になるのは他の星における携帯端末と同じだという。

森だけでなく海の中でも強烈な生存競争が繰り広げられている。鉄をも食べる怪魚や刃のように鋭いヒレを持つ魚が確認されており、沿岸の浅瀬が影の刻に発光する記録から陸上と同様の捕食性が海にも広く分布していると推定される。CDFは当初、衛星写真から復元したこれらの生物群を見てベノム帝国のバイオウェポンを疑った。だが実態はむしろ逆であり、帝国のバイオウェポンの設計思想の方がこの星の生物に近いというのが現在の解析である。

HISTORY ─ 歴史

セティボスⅢはライラット星系でも指折りの環境指数を持つ星でありながら、長いあいだ無人の星であった。知覚種族が存在せず、攻撃性の高い植物と昆虫が闊歩する危険地帯ばかりであったためである。タイタニアのニヴィディウム鉱床を巡る争いが第1次ライラットウォーズの火種となった頃も、この星は誰も定住していない手つかずの星であった。先住文明の痕跡は今日まで一切確認されておらず、この点でタイタニアやフォルトナとは事情が異なる。

入植の試みがなかったわけではない。ハクティバ通商連合が現在の形にまとまる以前のエラダードの商工会には寒冷で鉱塵の飛び交う母星からより住みやすい星へ本拠を移したい思惑があり、幾度もこの星への入植を試みている。だがそのどれもが失敗に終わった。開拓団は上陸のたびに森へ呑まれ、拠点は数年と持たずに放棄された。共和国や帝国がフォルトナで犯した失敗とほぼ同じことを、通商連合の前身もまたこの星でしていたことになる。

今のガロウの民がいつこの星へたどり着いて定住したかは不明である。少なくともIGA戦役の時点で都市国家を営んでいたことは確実であり、さらに辿っていくと250年近く前にまでさかのぼるようである。一説にはこの星へ来た民はもともとハクティバ圏へ出稼ぎに向かうため星系中央部を飛び出した移民船団であり、ワープ航路がセティボスの重力で捻じ曲げられた末に偶然この星へ流れ着いたといわれている。定住を好まないバステトイドが国民の多数を占めるという事実はこの説を裏打ちしているが決定的な証拠は鎖国の壁に閉ざされたままである。

証言を繋ぎ合わせた限りでは定住の初期には沿岸の安全な岩盤にドームで覆われた都市国家が幾つも築かれ、それぞれが自治領として森と嵐に向き合っていたとみられる。都市国家を一つの連邦へ束ねたのは軍事力を握った中央の一族であり、各自治領の代表による評議会は残されたものの実権は軍を統べる家の当主に集中した。連邦の名を掲げながら実態は王政に近いという現在の統治形態はこの時期に固まったものである。外界から届く商工会の開拓団を助けもせず追い返しもせずただ森が処理するのを見ていたという証言は、この国が外界に対して取り続けてきた姿勢をよく表している。

IGA戦役の時代、隣の衛星セティボスⅣには独立星系連合が要塞を築いた。連邦は表向きどこにも与しない姿勢を貫き、共和国と通商連合の協力要請をいずれも黙殺している。だが亡命者の証言はこの沈黙の裏側を伝えている。連邦は連合へ武器を供給し、末期の連合を蝕んだ「狂戦士」を生むアランナラの供給元でもあった。連邦がⅣを「ロザリア」と呼んだのは宿敵としてではなく取引相手としてであり、当時シコラクスへ出入りしていた若きグリムクロウが連合との繋がりを個人的に保ち続けたことはハーディング将軍の記録とも符合する。彼が連邦の頂点に台頭して以降、連邦が連合の遺産を集め始めたとCDFは分析している。

戦役後にボルツ公国が本星の大気圏へ移り、公国の破綻を経て通商連合が圏内の資産を握った現在も連邦の沈黙は破られていない。鎖国が破られたと言えるのはⅣと第5衛星セティボスⅥの管理を自ら申し出た近年の一件と、次の項に記す一人の配信者の闖入だけである。

EXILES ─ フィチナとの奇妙な繋がり

これほど昔から鎖国している上に辺境ともいえる立地も相まって、この星とガロウ連邦は未だ謎の多い勢力である。それでもある程度の情報を推測できるのは最新の観測衛星と傍受記録のお陰だけではない。ガロウ連邦から亡命したホワイトタイガー系とユキヒョウ系のバステトイドの一団がフィチナに移住しており、その子孫から当時の国の内情を聞くことができたからである。

一団はもともと熱帯性の気候に慣れていなかったことに加え、連邦の独裁的かつ危険思想をはらんだ体制に危機感を抱いて逃れてきたとされる。亡命は宇宙歴3800年頃、共和国の成立から一世代も経たない時期とされる。命からがら逃げてきた亡命者を損得抜きに迎え入れたのは、共和国のフィチナ州へ併合されて間もなく自身も他州から白眼視されていたフィチナだけであった。寒冷地に適応した白い毛並みの一団にとって氷の星は皮肉にも本星より住みやすい土地であり、彼らは地下都市の一角に静かに根を下ろした。亡命からおよそ200年が経ち世代は3つを数えるが、90代に達した3世の古老や伝え聞いた4世代目の子孫は当時のガロウを知る貴重な情報源となっている。

決定的なことも併記しておく。この一団にはガロウの代名詞といえる完璧な哨戒網の原型となった機構「タイガーズマスク」を知る者が含まれている。ガロウ連邦への直接侵入を試みるなら彼らから情報を得るのが最も近道であり、過去にグリムクロウ提督と直接相まみえたワイルド・ブルー・ストライカーの一団もフィチナを訪れて突破口を探したとされている。

BROADCAST ─ 最新の情報源

鎖国されたガロウの最新の情報源は観測衛星でも亡命者でもなく、アルペジオ総帥ビッグ・ボスの長男にして迷惑系動画配信者のゲリムによる単独調査である。ハクティバ圏で名高いこの碌でなしはガロウ連邦の美女に声を掛けるという魂胆だけを胸に取材機材と着替えと現金9000セグルを積み込み、単機でセティボスⅢへ突撃した。彼の機体が「タイガーズマスク」の哨戒網に撃墜されなかった理由は本人も語らない。傍受記録は連邦の軍事顧問が個人的に通行を指示したことを示しているが、顧問がなぜ一介の配信者を知っていたのかは解析されていない。

配信映像には軍事顧問とみられる人物が呆れ顔で街を案内し、やんわりと彼をキューへ送り返す様子が残っている。だがこの時うっかり画面に映り込んだアランナラの出荷コンテナと栽培プラントが物議を醸し、星系のニュースを大騒ぎさせた。同時に映像は現在の連邦の都市の様子・美女が多く住むという半ば都市伝説が嘘ではなかったこと・首都ネオ・ガロウの港に並ぶ高性能な戦艦の数々を間接的に映し出しており、CDFにとって数十年ぶりの貴重な一次情報となっている。

とりわけ深刻に受け止められたのは栽培プラントの存在である。過去に30を超える国を内側から滅ぼした薬物を量産する体制を連邦が持つと判明したことで星系中の警戒度は一気に上昇し、本来敵側であるはずのベノム帝国までもがガロウ連邦を警戒の対象に定めた。三大勢力の奇妙な停戦と情報連携がこの星を巡って続いているのはこのためである。

SOCIETY ─ 住民・社会

主な人種はトラ系のバステトイドである。連邦の実体はいくつかの自治領の集合体であり、強健な中央政権が実質的に王族と同じ役割を果たしてドーム都市を一括で統治していると解析されている。およそ300標準年前のコーネリアの勢力図に近い古風な統治形態が、鎖国とともにそのまま保存されているとみられる。国営放送が提督を「国父」と呼ぶことは傍受記録で確認されており、亡命者の証言する「軍を統べる家」が今もこの国の頂点にあることを示している。

暮らしは潮汐固定の空に合わせて組まれている。表の半球の住民にとって決して沈まないセティボスは巨大な時計であり、惑星の満ち欠けと空を横切るⅡとⅣの位置から時刻と日付を読む習慣が証言に残る。連邦の暦は10標準日の公転を一つの「週」と数え、その末尾に3日の影の刻を置く構成と推定される。影の刻は嵐が最も荒れる時期でもあるため人々はドームの内側に籠り、街の灯りと森の光を眺めて過ごす。裏の半球には都市がほとんどなく、セティボスの昇らない空を見るためだけに旅をする者を「裏を見に行く」と呼ぶ言い回しがあるという。

連邦の都市は嵐と森の双方から守られている。防護ドームは台風を遮るためのものであると同時に、影の刻に光へ引き寄せられて動く植物の侵入を防ぐ壁でもある。ドームの縁を定期的に焼き払う作業は市民の義務であり、火炎放射器が生活必需品となった背景にはこの仕事があるとみられる。

MILITARY ─ 軍事

軍事については不透明なことが多いが、バステトイドの中でもとくにトラ系の種族を主体とした軍隊を形成していることは明らかになっている。国民のすべてが屈強な兵士と言われるほどの軍事体系を持ち、衛星軌道上の艦隊は小型ながら帝国の主力にも引けを取らないと評される。アルケニア群島の火口に沈められた総督府は対艦砲台の砲列を兼ね、周辺空域には物理爆砕型のドローンが大量に巡回している。詳細は総督府の項に記録がある。

近年CDFが最も警戒しているのは無人兵器とコンピュータウイルスの製造である。イロウルの気まぐれ事件でサドガシマ・ポンジュウロウに濡れ衣を着せた少年ワートル・ブロアスカが現在この星に合流し、正体不明の軍事顧問の下で開発に関わっているとみられている。当時は星系ネットで悪ふざけを繰り返す素行の悪い少年にすぎなかったが、現在の状況から推察するに完全に悪人の道へ進んだと判断して差し支えないとCDFは見ている。

ワートルは単なる軍事関係者にとどまらない。グリムクロウ提督が自費で契約しているとみられる遊撃隊「カスピアン・タスク」の構成員だからである。素行が悪く金に汚く、よからぬ組織に遊撃隊として加わっている。何から何までどこかで見た内容であり、CDFの分析官は口を揃えて「ピグマとスリッピーを足して2で割って愚かさを足したような奴」と評している。

ARCHIVES ─ 記録余話

この星は美しい気候だけでなく、女性が見目麗しいことでも知られている。星系のどの勢力にも与しない国であることも相まって一人歩きした噂は秘匿された情報によってかえって神秘性を増し、星系中の男性の興味を惹きつけてやまない。そしてこの星へ無断で侵入した者の多くは対空砲撃で撃墜され、ジャングルの植物たちの昼食になっていると思われる。「好奇心は身を亡ぼす」を地で行く話である。

影の刻のセティボスⅢを軌道上から撮影した一枚は、CDFの観測衛星が偶然に捉えたものである。黒い海に浮かぶ大陸片の全体が青白く縁取られ、その中に首都の白い灯りが小さく灯っている。写真は機密扱いのまま情報部の廊下に飾られており、見た者は例外なく「一度は行ってみたい」と口にした後で「行けない」と付け加えるという。

連邦が唯一国交を持ったステファノーのヤマタケル国との往来は、惑星の消滅とともに途絶えた。フィチナの亡命者たちが語る証言はその往来とは別の細い糸であり、影の刻や火炎放射器の話もこの糸を伝って外界へ届いたものである。眠れる虎の庭が次に扉を開くとき、扉の向こうにいるのが客か敵かを星系はまだ知らない。